日済関係の原点 三 姓 穴

 バスはやがて済州の街へ。できるだけ港に近いところで下りたいのだが、チェジュのどの辺か分からない。と思っているうちに東門市場の前らしきところを通るが、一番後ろなので動けない。そのうちバスの客はほとんどいなくなり、バスはターミナルへと着く。確かここは済州と新済州の中間点で、目的地とはほど遠い。とりあえず、タクシーに乗りフェリーターミナルに向かう。地図を観ながら行くが街の東を通っているようだ。怪しくも思ったが、タクシーにディスプレーがついていて、それを通じて本部と連絡を取り合っている。どうも運転手もよく分からないらしい。でも、無事木浦行きのフェリーターミナルに到着した。
 タイムテーブルをみて、日本語の通じない案内で確認すると木浦行きの船は14:30出航のようだ。2時間近く時間があるので、「三姓穴」に行ってみることにする。荷物をコインロッカーに入れ、タクシーを拾って「三姓穴」に向かう。
 済州島には、土の中から三つの姓をもつ3人の神が現れ、海から流れ着いた3人の姫と結婚して、それが今の済州の人々の祖先だという三姓神話がある。その3人の神が出てきた穴が三姓穴なのだ。さらに、海から流れついた姫というのが日本人らしいというのである。たかが伝説の跡とはいえ、日済関係の礎であるこの地には、日本人として訪れること自体に意味がある。
 入口で、2000wを支払いチケットを買う。そこし行くと立派な門があり、そこに切符もぎ兼案内の女性が立っている。案内人は中国語はできるが日本語はダメらしく、再び中国人と間違えられて、残念がらせてしまった。まずは右手の資料館に行けということなので、倉庫のような建物に入る。
入口で国籍を聞かれるが、どうも中国人や英語圏の人には、奥で説明のアニメがあるらしい。資料館の中には三姓伝説についての模型がいくつもあり、右の写真は3人の姫と出会ったところである。中央には済州島の大きな模型があり、ボタンを押すと点灯しているところが、おそらく伝説にまつわる地なのだろう。弘化閣の看板と説明板、三人の神?神官?の衣装などもある。  時間もないのと日本人なので、アニメもみずに外に出た。ここは、緑の多い公園になっていて、三姓穴といくつかの建物が点在し、ぐるりと左回りでそれらを見て回れるようになっている。一応それらの写真も撮ったが、観光案内書にもあるものなので、ここにはおもしろいものを紹介する。一つは、椎茸栽培のホダ木である。写真のように日本と同様に組まれている。日本の椎茸栽培農家を窮地に追いやった韓国椎茸を公園内であえて栽培しているのがおもしろいではないか。さらには、この公園を守る?犬の小屋である。柴犬のようなアジア犬が中でこっちをにらんでいる。おもしろいのが犬小屋で、犬小屋といえ、韓国伝統家屋の形態と色で思いっきり目立っている。
 三聖殿などの建物も芝の緑や赤土に映え、整然として気持ちがよい。芝の中にポツンとある三姓穴も、何とも聖域の風情があるが、それより三姓穴のまわりの鬱蒼とした楠?の杜の空間が落ち着く。ぼんやりとしていたいところだが、せっかくだからこの公園の隣にある民俗資料館にも行ってみたくなった。


  H14.12.29-3