広寒楼苑
ここからは、来た道を少し戻り、南原の観光拠点「広寒楼苑」に向かう。広寒楼とは、ブランコ遊びをしていた春香を夢龍が見初めた「春香伝」の有名な舞台である。この楼閣を中心に池や古民家、様々な施設が広い苑地に点在する。この苑地は土塀に囲まれ、1300Wの入苑料がいる。KBSドラマ「怪傑春香」では、この塀を飛び越えた現代の春香が、苑内を散策していた夢龍の上に落ちてきたことから物語が始まっている。
南原の観光土産物店は右の写真のようにこの苑地の西にあって、いろいろな物品が多数の朝鮮家屋に並んでいる。暑くて買い物をする気も起こらず、そのまま塀沿いに歩いて虎の狛犬が守る入場門に向かう。園内に入ると、韓国らしい土っぽい広場に何棟かの大きな楼閣が見える。私はまずぐるりと右回りに周辺部を歩くことにした。ゴミ箱も広寒楼デザインのものが置いてある。
ひょうたんの茂るトンネルでは写真のように多くの家族連れが記念写真を撮っているが、何か意味があるのだろうか。やがて、伝説の?ブランコが見えていた。韓国のブランコは、右の写真のようにとにかく高さが高いのが特徴だ。多くの親がその周期の長い長大なブランコに子どもを乗せようと躍起になっている。白い馬もつながれており、希望者は有料で馬での散策もできるようだ。また、輪投げなどの昔のおもちゃもあって、いい大人が興じている。その近くの棟には伝統楽器類が展示されている。
そこから少し入ると、春香の家とされる茅葺きの古民家:月梅家がある。広い庭に実際にトウモロコシ(この時代にあったのか?)や鶏小屋、離れのトイレや池(やたら目立つ春香&夢龍人形が置いてあるのはミスマッチだ:左写真)がある。家の中は台所や機織りの部屋、居間などが再現されているが、食卓を囲む春香の母?は陰湿で怖い顔をしており、ここまで甘いラブロマンスの伝説の舞台を楽しんでいた人の気持ちを打ち砕く。それでも、ずらりと並んだキムチ瓶の傍らに、気持ちを込めた多くの石が積まれている
そしてこの苑の核心部分に向かう。きれいとはいえない池が長々と横たわっていて、ここが現代春香が落ちた池なのだろう。この池は天の川を表したものだそうだ。枝振りのよい木の茂った島などもあるが、回遊庭園としては泥臭い。池のたもとにもなかなか味わいのある大木が枝を伸ばしているが、すぐ近くまで、石垣で池を切っているために、バランスが悪い。大木は仕方ないので根の一部を池の中にまでのばしてる。の中程にほとんど堰のような石橋(右写真)がある。どうもカササギの橋を表したものだそうである。
春香館というところがあったので、入ってみる。そこには春香伝の名場面の絵が額に入って、ストーリー順に並んでいる。例の悪代官の前で「馬牌」を掲げる、日本でいうと水戸黄門のおきまりシーンと酷似した場面は特に力強く書かれており、(左の絵)ここにいたってやっと春香伝のイメージがわいてきた。館を出てふと池の方に目をやると、どうも春香と夢龍に扮装した二人が船遊びをしている。広寒楼には人が上がれないみたいだが、池につきだしたウァン月亭には上ることができる。月を眺めながら祝宴をするにはなかなかよい場所である。
池の端には山神山をかたどった?山(というか出っ張り)もあって、このあたりは天上を表しているのである。また、ステージなどもあって、春香祭などのイベントがこの苑内でにぎやかに行われている光景が想像できる。他に見るべきものもないので、苑を出て春香路を通り、バスターミナルに向かう。
左写真はバスターミナルの中の様子である。バスターミナルに戻ったときは、ちょうど正午であった。タイムテーブルを見ていると、ある人が近づいてきて「イエスを信じるか」といった質問をしてきた。わからないふりをして、一つしかないチケット売り場に向かう。これから馬耳山に向かうのだが、もちろん南原から馬耳山の近くの鎮安へいく直通バスはないだろう。ということで、全州を経由して鎮安に向かうことにする。4400Wのチケットをう。おつりをもらっているとき、私の横から二人のアジュマがお金を入れてチケットを買おうとして、注意された。全州の人はせっかちなのだろうか。バスは来ていたので乗り込む。乗客のチケットの回収が終わると、12時15分、南原を出発した。
2003 08/15