周王山へ

 立ち席のまま、バスは周王山へ向かって走り出した。他の立ち客は、ハンカチや新聞紙などを床に敷いてそこに座りだした。前のカメラ女も座り、女性二人の外人は運転席の横の階段に座り込んで、立っているのは、私だけになった。しかし、せいぜい1時間くらいだから立っててもどうってことはないだろうと、立ったまま景色を眺めていた。すると後ろに座ったアガシが、新聞紙を都合して下に敷き、ここに座れと言うではないか。立っていた方が景色も見えるのだが..とも思ったが、せっかくの親切にケチをつけるのも気が引けるので、お礼を言って座ることにした。しかし、床近くは冷房も届かず蒸し暑い。
 外の様子は全くわからないままバスに揺られていると、すぐにドライブインのようなところに停車した。トイレ休憩のようである。さらにバスはよく整備された山道をどんどん走る。14時5分、青松に着く。数人の客がそこで降りたので、やっと座れることになった。すぐに周王山に向けてバスは出発し南進する。
 14時12分、バスは右写真のようにキャンプ客でにぎわうチュワン川を渡り、いよいよ周王山に向けて東へまっすぐ走り出す。とはいってもなだらかな平地が続き、左写真のように果樹栽培の畑が広がる。リンゴ畑もある。そのうちタバコ畑の向こうに、赤っぽい岩肌を見せる山が見えてきた。どうもこれが周王山のようである。その手前にはホテルの様な建物が見えてきた。
 ドンドン山が近づいてきて、バスは14時22分、広い周王山バスターミナルに到着した。左写真のターミナルの建物の中にはいると売店や土産物屋があるが、冷房は効いていない。建物の二階が国立公園の事務所のようなので、パンフレットだけでももらおうと上がっていく。 階段には、第一〜第三の滝の大きな写真があるが、それを見る限り、それほどすごい滝のようではないようである。冷房の効いた事務所にはいると右写真のように小学生がたくさんいて、なにやら木材工作をしている。大きな周王山の立体模型図や地図もあって、周王山山域のおおよその様子はわかった。一緒に来た二人の外人女性は職員に登山道についていろいろと聞いている。私はパンフレットを求めたが、あったのは韓国の国立公園すべてのパンフレットだけだった。この事務所からは、周王山の大岸壁が良く見える。ベランダには写真付きの案内板もあって、正面の大岸壁が旗岩、左尾根の断崖が将軍岩ということが書いてある。
 職員に明日蔚珍に行きたいのだがどう行けばよいかを尋ねると、いったん青松の北にあるチンボ(私の地図では真安なのだが)行きバスに乗り、チンボから東海ぞいのヨンドクへ行き、そこから北上すればよいとのことだった。事務所を降りてバスの時間を確認する。また、売店で1万wの帽子とバンダナを買う。
 さて、こんどは今日の宿探しだ。ターミナルを出て、その奥にある観光団地に向かう。 宿泊施設は少なそうだなあと思っていると、私に声をかける者がある。振り向くと、少し腰の曲がったやせたハルモニである。まじめな態度で、うちの民宿に泊まらないかというのである。一応値段を聞くと2万5千Wだという。この値段なら民宿でもいいだろうが、ただ、智異山ときの悲劇を繰り返さないように設備をよくチェックする必要があるであろう。見せてくれと言うと、ハルモニはついてこいと、私の前をドンドン歩いていく。俗離山のような大規模なものではなく、川沿いの一本道にほとんどの食堂や売店が並んでいる。ここの観光団地の特徴は、ほとんどの店が豊富な水を利用しての派手な納涼の演出だ。噴水や窓から流れる滝、いろんな所から水しぶきが上がっている。
 五分ほど川沿いの観光団地を歩き、ハルモニは、国立公園入口のすぐ手前で、小さな路地を右に曲がり奥へ入っていく。するといかにも田舎の民家といった家があった。右写真のように青い屋根のコの字型の典型的な韓国家屋で、いくつかの部屋があって正面のいちばん左の小部屋を指さしてここだという。上がってみると、下の写真のように白い紙で被われた3畳ほどの部屋には布団の他、テレビも扇風機もあってまあまあの部屋である。トイレやシャワールームはあるのかと聞くと、写真のようにトイレとシャワーに案内して見せてくれた。智異山の民宿と比べるとかなりちゃんとしたものである。庭も広くて開放的だし、公園入口のすぐ近くなので位置的にもベストである。ハラモニにお金をわたして部屋にはいる。荷物を整理していると、ハラモニは冷たい牛乳をいっぱいに入れたコップを持ってきてくれた。李舜臣のドラマを見ながら一休みする。その後、テコンドみたいな(キックだけで勝負する)競技会もやっている。今日は比較的ゆとりのある日程であった。
夕方になったら旗岩もきれいに見えるだろう。ということでしばらく昼寝する。

   2006 08/12