何軒か店を回った後、市場の真ん中?の通りにある屋台で飲むことにする。言葉はカタコトしか通じないので、店のアジュマに品物(ほとんどが海産物)を指さして選び、目の前の鉄板の上で焼いて食べる。貝類はわかりやすいが、何やらわからないものもある。「ウナギ」と言って、出されたブツ切りは妙にこりこりしている。もしかすると日本でも滅多に食べられないヤツメウナギかも?ビールの酔いが回ってくると、このような市場の雑踏の中での夜の会食も楽しい。私たちは先輩と二人だったが、日本人と聞きつけるといろんな人がやってきて商品を持ってきたり、話しかけたりしてくる。知っている日本語を試したり、屋台のネタを説明したり、偽ブランド品をいろいろと持ってきて値引きするから買えと言ったり退屈しない。私は6年間、兵庫県にいて、どうも漠然と朝鮮人というイメージが、日帝の恨を常に持ち続ける陰湿な民族(このころにはだいぶ現実がわかってきてはいたが..)であったが、この会食でそのイメージは払拭させられてしまった。夜になっても街角には若い特攻警察が結構いるので、不安もほとんどない。むしろ日本なんかより安心して楽しく飲める雰囲気がある。帰りには、ほろ酔いでホテルに帰りながら、工事現場の隅にそそうをした。
8月1日、ソウル最後の日、早朝に起きた私は、ホテルを出る。この季節、野外を気持ちよく散歩できるのはこの時間帯だけである。昨日は目的がなかったが、今日は昨日チェックしたタプコル公園に向かう。地図もないし、手がかりは昨日バスで紹介されてからたどったホテルまでの道のりの記憶だけ!公園の名前も覚えていない状況で無事たどり着けるか!...山歩き、街歩きには自信のある私の記憶力を試す良い機会だ。ロッテホテルから鐘路を通り、タプコル公園までは約1kmである。
全く問題なく、昨日の道を逆行して鍾路のタプコル公園に到着。ここは、1919年3月1日に起こった抗日独立運動の発祥地。公園内には記念塔やレリーフ、独立運動家ソン・ビョンヒの銅像、そして独立宣言書が読まれた八角亭(パルガクチョン)があるらしい。しかし記憶に残るのはレリーフだけで、当時の抗日運動の熱気が伝わるものである。公園内には他に人一人もいず、静かな空間が流れてゆく。しばらく園内を歩き回って、再びホテルに戻る。後で地図を見ると、ここは最も行ってみたかった仁寺洞は、この公園が入口であった。やはり地図くらいは持って旅行したいものである。
この後のことはほとんど覚えていない。7:30ホテル発。金浦空港に向かう。ガイドは、韓国についてしゃべる。記憶に残るのは、ソウルと日本人は正確に発音できないことと、オリンピックなどの行事があるときは車のナンバーの最後が奇数か偶数かで車両規制が行われたことなどである。
韓国を出国し、そのまま松山に向かい空港で解散となる。この初の海外旅行は、韓国の文化の一部を垣間見る良い機会になったと思う。