けんちゃんのページ      H20.05.18新設

  ****** プロローグ ******   



 思う存分自然の中で遊びまわることは、子どもにとって最も楽しいことである。そして最も強く体の中からわき出てくる欲求でもある。私たちの生きる力は、日常の生活や人間関係の中でもはぐくまれてきている。しかし、その中でも自然遊びの体験は、より高度で常に変化する躍動的な自然現象と、自然と人間とのつながりの知識、さらには豊かな発想や実践能力がはぐくまれる創造の場として重要である。
 少し昔までは、利用する自然と親しむ自然とは、分けて考えられることが多かった。そして、親しむ自然というのは、人の手の入らない原生の自然がありがたがれてきた傾向がある。しかし、近年、人とのつながりがある里山が見直されるようになって、私が疑問に思ってきた自然に対する常識が変わってきている。
 そのような自然に対する感覚は、私自身が豊かな自然体験に恵まれた子ども時代をおくってきたことで育てられてきたようである。そして今、大人になって、日本各地のさまざまな自然の中に積極的に入り込み、じっくりと体感してきたことで、私の自然認識は、さらに豊かなものになったと思っている。

 現在、私は、子どもとふれあうことが多くなって、子ども時代のこと思い起こすことが多くなった。特に自然という点で考えると、小学校高学年の自然体験が最も驚きとスリルと発見の充実感に満たされており、私にとって最も楽しい時代であった。さらによく考えてみると、その時代の私にとって、重要な人物が浮かび上がってくた。それが「けんちゃん」だった。けんちゃんとは、私の同級生の親友のことであるが、当時としても珍しく、水道も電気もない山の中の一軒家に住んでいたのであった。この超野生児と言えるワンダーけんちゃんと、もし出会わなかったら、おそらく私の自然体験は、かなり低レベルなものになっていたでだろう。そう考えると、そう、けんちゃんこそが、私の充実した自然体験の時代を作り出した優秀なプロデューサーだったのである。このシリーズでは、そのけんちゃんとの自然遊びの体験を思い出しながら紹介してみることにする。ただ、書いていることは、かなり前の記憶をたどったものなので、本文の事実関係、大きさや時間などはかなりあやふやである。それで、ストーリーが不自然にならないように推測したり創造したりして書いているところもある。その点はご了承願いたい。