ある時、魚が多くとれたのである漁師がそれを売りに大阪に行くことになった。
それを見つけたたぬきは、
「もうけさしてあげるから、大阪に連れて行ってほしい。」
と、しつこく頼んだ。
しかたなく、漁師はたぬきを連れて行くことにした。
ところがたぬきは、大坂に着くまでに船底にあった魚の目玉をくりぬいて全部食べてしまったそうな。
「こんな目玉のない魚は売りものにならん。」
と言って漁師はかんかんに怒った。
でも、たぬきはおちついて
「先に大阪の港に上陸させてください。必ずこの魚を売れるようにするから。」
と言った。
漁師はしかたなく、たぬきを大阪の港につれていった。
大阪に上陸したたぬきは、坊さんの姿になり、
「今年は悪い疫病がはやる。けれども、目のない魚を売りにくる人がいる。それを食べると疫病にかからなくてすむ。」
と、ふれてまわったそうな。
しばらくしてやってきた漁師の荷は、お坊さんの言うとおり目のない魚ばかりだったので、たちまち魚は高値で全部売れてしまったそうな。
今でもがらん山の明神の上には、たぬきが住んでいたというほころがあるそうな。