そして、朝が近づいて辺りが明るくなり始めた頃、もう十里もきたところだろうと立ち止まりました。
ところが、どろぼうは辺りを見回してみてびっくりしました。
どろぼうが十里もきただろうと思っていたこの場所は、どろぼうが仏像を盗んで外に出た薬師堂の前庭だったのです。
結局、どろぼうは一晩中お薬師堂の庭をかけずり回っていたということなのです。
またこんな話もありました。
ある泥棒が薬師堂からお薬師様の仏像を盗み、背負って逃げていると、
「盗んではいけない」
「盗んではいけない」
と背中の仏像から声がするのだそうです。
どろぼうはその声を聞いているうちに反省して、薬師堂もどしたのだそうです。