漢拏山下山1
帰りには時間制限もないはずだから、マイペースで下山する。頂上部は雪も吹き飛ばされて深くなく、登山道は圧雪なので、雪がないときよりも歩きやすく膝にも優しい。薄くガスもかかってきたので、頂上部の樹氷のオブジェと発達したエビの尻尾を鑑賞しながら、ぼつりぼつり下る。やがて樹林帯に入り少し下ると、ツツジ畑避難所の巨大なソーラーパネルが見えてくる。
特に用はなかったが、多くの人がよっているようだからこの避難所によって行くことにする。避難所の建物の中は思ったより狭く、中央の土間をコの字型に囲む二段の一般的な形式の避難小屋であるが、すべてモルタルである。寝具も何もないところをみると、あくまで緊急避難所で、宿泊所としては常用していないようだ。さらに空色ペイントだものだから冬泊まるには底冷えしそうだ。ただ外見は、真っ黒い溶岩のブロックを積んだ洋式の棟が二つうまい配置で並んでいて、趣のある北国のペンションのようだ。
その横のプレハブには、二人の者がつめていて、中の大きな鍋からは湯気が立っている。多くの人はこの売店により何かスープのようなものを注文している人が多い。メニューは上の写真の通りだが、いろいろあって体を温めるのにはありがたい施設である。いったいそれぞれが何であるのか興味もあったて、私も甘えてみようかとも思った。が、ちょっと疲れていてメニューが何なのか聞いていくのが面倒なのでやめた。
離れにソーラーパネル付き野外トイレが五棟ならんでいて、そこで用を足す。日本では見られない大型ロール(結構韓国の旅館にはある)のトイレットペーパーがそなわっている。うっすらと雪がのっていて寒そうだ。
この避難所あたりから下は開けた台地になっていて、どうもこのあたりがツツジ畑らしい。春の花園を想像しながら観る霧氷に輝く冬のツツジ畑は魅力的だ。
後は樹林帯をひたすら下るだけである。行きは時間制限があってあまりゆとりのなかったので、下りは自然と戯れながらぼちぼち下る。日は傾き、行きと違ってだいぶ下山路は暗く幻想的になってきた。ピークハンターの山登りでは、この単調な下りはうっとうしいだけで、一気に下山してしまいたいところだが、私はこのような静かな散歩道の下りは好きである。いろいろと思索にふけりながら、また単調ながら春を待って一所懸命生きる生き物たちに囲まれているのがここち良いのである。
下りは膝を痛めやすいので、その配慮という意味もあって、私はいろんなところで休憩しながら、荷物になるだけの非常食を食べながら霧氷のついた木々の枝のすれる音や鳥のさえずりに耳を澄ます。登りでは観られなかったカラスが下りでは結構いて、おそらく登山者が落としていったものに目を光らせている。鳴き声もすんでいるし頭の形からも日本のハシブトガラスと全く同じ種なのだろうが、結構神経質そうだ。カメラを向けるだけで、過剰に反応する。厚かましい日本のカラスに慣れた私にはかわいく思える。
H14.12.27-5