漢拏山登頂
目の前に見えた真っ白な直方体の山頂避難小屋に向かってぐんぐん登り、問題なく快晴の山頂に午後一時三十五分に到着する。登山道から山頂までしっかりとした柵が切れ目なく続いているので、コースから外れることはできない。山頂付近は吹きっさらしなので、積雪はそんなにないが、岩や柵はびっしりと雪に覆われている。頭上は雲一つない晴天なので、この銀世界は照り返しでとてもまぶしい。今回の登山での最も大きなミスは、サングラスの準備を忘れたことである。雪目のつらさは十分味わったことがあるので、空が明るくなってからは、薄目での山行になった。山頂は広く、板敷きの段差がつけてあり、そこに多くの人が腰掛けられるようになっている。その下には、ソンパナクまで9.6kmと、カヌンサまで8.7kmの道標が建っている。観音寺コースも解禁だと言っていたので、日本なら迷わずそちらに下山するが、まだ不確定要素が多いため、無理はしない。
頂上に立って始めて見える噴火口:白鹿譚は、スプーンでえぐったようなきれいなラインを描いて眼下に広がっている。三角点のある西峰はちょうど反対側にあるが、そこへ行く火口壁は当分通行禁止らしく、ほとんど標高の変わらないこの東峰が登ることのできる漢拏山の山頂である。南北の火口壁が低くなっていて、もし噴火しようものなら、溶岩流はこの島の南北の中心地である済州市と西帰浦市をまともに襲うことになるのではないか、と余計な心配もしてしまう。冬の火山は噴火口は、いろいろな噴火口を今まで見たことがあるが、雪で化粧しているせいか、それまでの単調な山歩きのためかなかなか感動ものである。風もほとんどなく、いつまでも眺めていたい光景であるが、あんまり感動していると、目が心配である。
ちょうどその時、無線機?のスピーカーがなにやら大きな声でしゃべりだした。それが終わる回りで休憩していた登山者達が「ネー」と一斉に返事をして動き出した。時刻は1時40分を回っている。考えるに、もう頂上での出立時間を過ぎたので、そろそろ下山してくださいってことだろうか。私もそろそろ下山しようと思った。しかし、山は、朝と夕方が最も美しい。この天候で、これだけ整備されている登山道なら日が落ちてから夜になって下山しても不安なことはないのだが...。
しかし、国立公園管理の職員が山頂部にいて、全員退去させるといった雰囲気である。この手の単調な山は、体感的には下りの距離は登りの二倍近くに感じる。十km近くもある冬の散歩道をぼちぼちとS&Gの歌でも口ずさみながら帰るとしよう。
というわけで、午後1時45分、下山を開始する。
H14.12.27-4