西帰浦の夜

 バスは、なだらかな傾斜の道をジグザグに下っていく。さて問題はどこで下りるかだ。というのも済州市のバスターミナルが市の中心地ととんでもなく離れたところにあったからだ。済州市はまあ詳しい地図があるからいいとしても西帰浦に至っては手のひらくらいの簡単な地図だけである。バスはグニグニと曲がって方角は分からなくなるし外は暗くなるし、気が気ではない。 街の中心に入った頃には多くの乗客が下りていたので運転席の近くに移動して「ポスタミナルオルマエヨ?」と訪ねる。土地勘のないヤツがバスターミナルで下りるということをアピールするためである。ところが運転手が言った金額が聞き取れない。聞き返すと、近くのアジュマが助けに入ってお金を入れるように指示する。ちょうどその時、イルミネーションのある大きな交差点に出る。西帰浦市の中心のロータリーである。運転手は交通量の多いロータリーを回りながらガチャガチャとお釣りを出してくれた。これでは事故ったら私のせいだ。
 18時頃ロータリーの一角の小さなターミナルに着くと、運転手は下りるように私に指示した。まずは宿探しだ。ここは中心地なので旅館は結構あるみたいだ。しばらくそのあたりを歩き回ってターミナルの裏のマンス閣旅館に泊まることにした。中に入ると分と独特な人参?の香りが漂う。3万w?をちっと陰気そうなアジュマに支払い、荷物を旅館に置くと食事に出ることにする。
 まず、韓国の街の華:市場に向かう。今日は歩き疲れていたが、市場をを歩いていると力がみなぎってくる。西帰浦は様々な魚介類が多く、どこにもあるキムチや日用品、唐辛子や雑穀、薬念の他、豚の頭や肝臓が丸ごとどんと置いてあるのは壮観だ。鶏肉屋が多いのもここの特徴のようだ。
 市場を縦横に一通り歩くが、ここにあるのはほとんど材料で、そのままテイクアウトできる食べ物がほとんどない。旅館の近くの食堂で夕食をとることにして戻る。すると市場のはずれに饅頭屋があるではないか。夏の釜山の饅頭の苦い経験があったが、空腹には勝てないのであった。かえって酒の肴にしたいところだが、できたての饅頭を2つ3つ頬張る。..これがおいしいのである。日本のパリッとした焼き餃子もいいが、釜山の饅頭が例外なのか...。
 途中ロータリー前のコンビニで豆腐とコチュジャン、焼酎(漢拏山)を買う。食堂では、アジュマ推薦の??チゲ(右写真4千w)を頼む。焼酎を頼むと、コンビニの袋の焼酎をさして不思議そうな顔をする。これは帰って飲むのだと言うと、もう一人いた陽気なアジュマが、中国人かと聞く。日本人ならもっと金遣いが荒いとでもいうのだろうか。片言でいろいろ話して楽しいひとときを過ごしたが、ここの記録も、パームのダウンとともに消えてしまったのであった。漢拏山の焼酎用ショットグラスを出るときに売ってもらおうと思ったが忘れてしまった。ということで、夜はテレビを見ながら歯磨き用コップで晩酌だ。快適なオンドル部屋なので、今日の疲れがどっと押し寄せて、22時前にはぐっすりと寝入ってしまった。
  H14.12.27-7