正房瀑布
食堂から出て、ほとんど人気のない海岸線を20分も歩くと、小さな橋かかる苔むした小川にさしかかる。その小川の下流を見ると、ほんの10m先でいきなり消え、ずっと向こうの海が見えている。それが正房瀑布上部なのであった。少し歩くと降り口があったので、下りていくと向こうでチケットを買うように言われた。
先に大きな駐車場があって、底にはチケット販売所と観光案内所、いくつかの売店があった。ほとんど人には出会わなかったので、かなりマイナーなところだと思ったが、どうもみんな車で訪れるらしい。
2000wのチケットを買って、再び滝への降り口に向かう。少し下るとすぐに目の前に柱状節理の断崖が見え始め、やがてその手前に滝が落ちているのがみえる。直接海に落ちる滝としては東洋一だと書いてあるが、この程度の滝なら、知床あたりにはいくつもありそうだ。
それよりこの滝には、4・3事件で多くの人が追いつめられ、身を投げた場所のイメージのほうが勝ってしまう。海岸にごろごろとある黒い玄武岩にも多くの血がしみこんでいるのだろうか。
ふと逆光の海を見るといくつもの黒い点が見え隠れしている。海女達だ。彼女たちは海岸やがけの下にモルタルを敷き、数人がグループで食事用具や道具類を広げている。1人から2人はそこに残っている。ドラマ「Loving You」のような若い海女はとんと見かけない。測ると、一回の潜水時間は約三十秒間で、寒い冬の海に潜るのはなかなか厳しい作業であろう。
また、海岸を下りたところに、何かを売っているような男が、コンクリートの亀に座ってカップ麺をすすっていたが、何者かよく分からない。遠くには西から鳥島、文島、森島がここを囲むように見え、西の崖の柱状節理も美しい。
再び階段を上り、駐車場に戻る。途中にある灰皿?ゴミ箱?は、溶岩の島をイメージさせる独特のものだが、違った用途に使うものかもしれない。駐車場の周りの店には、貝細工等の土産物が並ぶが、荷物になることもあり買う気はしない。さすが南国済州らしく、ミカンやバナナに混じってストローをさしたヤシの実も、この冬空の下で売っている。
このあたりは西帰浦のすぐ東なので、次の目的地、城山への向かうバスが通過するかもしれない。そこで、確認するため、駐車場の入口にある観光案内所に入った。案内のアガシに声をかけると、また「チュング?」と聞かれた。中国語が得意だったようで、日本人だと分かると残念そうな顔をする。韓国語と英語で、だいたい西帰浦のバスターミナルに戻る必要があることは分かったが、確認のため日本語の通じる案内に電話して、替わるように言われた。乗るバスの番号もメモして案内書を出た。距離はあるが、急ぐ旅でもないので、歩くことにした。
H14.12.28-3