朝6時過ぎ、起きるとまだ外は暗くナトリウム灯に照らされた登山口にも人影は見られない。雨こそ降りそうもないが、空には星もなく曇っているので、日出峰の日の出を見ることは、難しいと思われる。日出峰は標高180m程度の山なので30分もあれば登頂できるであろう。急いで登山の準備をして登山口に向かう。登山口のチケット売り場にはそろそろ人が集まってきている。2200wを支払い、石畳の遊歩道のような登山道を登っていく。外はまだ暗いが電灯があるので、危ないことは全くない。最初はなだらかなスロープを、そのうち道がジグザグになって傾斜も急になってくると、左右に巨大な溶岩柱を避けながら広い石段を登っていく。
やがて空が白み始めガスも出ていないので、視界が開けてきた。やがて直登の石段が現れそれを登り切ると頂上に飛び出した。山頂部には、すでに10名くらいいた。7時前で、やがて日の出の時間なので、日の出がきれいに見える位置を確保する。周囲の外輪壁は見事に鋸状の小さなギザギザになっていて、海のある火口部はなだらかにくぼんだ草原になっていて高木はほとんどない。東部がなだらかに低くなっているので、頂上部から海が見え、絶好の日の出鑑賞ポイントになっている。放牧場としても使われていたらしいが、天然のスタジアムといった感じで、保護すべき固有種もなく生態系も周りと分断されているので、イベント会場とすれば、世界的な観光施設になるであろう。
人はどんどん増え、7時過ぎには50名ほどが東の空をひたすら拝んでいる。しばらくがんばったが、さすがに7時半を回ると、あきらめた登山客が動き始める。私も写真を撮りながらロープが張られ、制限されている狭い山頂部を歩き回ることにした。昨日歩いた城山里の街を見下ろす。漢拏山はガスに包まれているが、ドラマ「オールイン」で教会と愛の家があった北方の海岸もよく見える。山頂には小さい監視小屋のような物もあるが、跡は眺めるだけのところである。
8時前に下山を開始した。山頂のすぐ下には城山里を望む小屋(売店?)があるが、まだ営業はしていない。先ほどはよく分からなかった溶岩柱(上からコン巌、禁磨石、別将巌:説明板がある)の間を見え隠れする城山里を眺めながらゆっくり下山する。ところどころにある50cm位のコンクリートや石でできた設備(コードが引いてある)が気にかかる。足元のライトを始め、他の設備も整備されつつあるようだ。営業していない下の小屋を過ぎ、なにやら怪しげなチョニョ巌を見に行って、北海岸線の方に下っていく。
日出峰の方にあたる北海岸は、すっぱりと切れ落ちており、ここから見る北壁はまさに絶景である。火山国日本にもこの日出峰のような単純に海に突き出た火山はほとんどないであろう。崖下の海岸にはクルージングのできる観光施設がある。案内板の料金表示には元もあって、中国人がここのお得意さんだということがわかる。ちょっと昔の日出峰の写真を見るとこのあたりに大きな白いビル(ホテル?)があったが、景観保全のためか、営業不振のためかその形跡すらなくなっている。あまりにも条件の良い位置なのだが、そのあたりは今は、イベント広場になっている。
その広場には組み立て前のテントや座席が大量に準備されている。たぶん正月(チョンゴル)のイベントがあるのだろう。すごいのはミカンでできた巨大なトルハルバンと羊である。「地元産業をアピールするにはこれくらいはしなくちゃ」と鮮やかなオレンジ色の像に感心する。愛媛ミカン生産者は、出荷調整で余ったジュースにもならないミカンの廃棄で心を痛めているというのに...。
日出峰正面の土産物屋を通り過ぎ、トンアム寺に行ってみる。極彩色のこの寺には鐘堂もあってこじんまりとしている。寺の裏には放牧場あり、馬が数頭いる。駐車場の溶岩でできたがっちりしたトイレで用を足してコンビニで寄り、民宿に帰る。部屋に戻って荷物を整理し部屋を出るとちょうど主人に会ったので、これから出発することを告げる。また、次の目的地は万丈窟へのバスについてたずねる。郵便局の横の散髪屋のところのバス停から出るという。それは知っているのだが、問題は乗り換えなしにそのまま行けるかと言うことだ。とりあえず、バス停に行ってみる。
H14.12.29-1