海雲台温泉

 海雲台温泉とは、一つの施設を指すのではなく、日本のようにこのあたりのいくつかの温泉浴場の総称らしい。私が見つけたのは、「清風(チョンプン)温泉湯」とハングルで書かれた小さな3階ほどのビル。後で調べると、ここは、60年以上の歴史のある純天然温泉で、泉源は摂氏55℃の無色透明のアルカリ性ラジウム食塩泉だそうだ。駐車場も大きく、数十台は停めれそうだが、十台程度停まっていた。車椅子では不便な真ん中に松の生えている階段を上り、一階の切符売り場?で入浴券を買う。写真のようなピンクのタオルとセッケンとシャンプーのセットで3800wを支払う。女湯が2階、男湯は3階のようだ。
 脱衣場の入口に靴磨きがいて、切符もぎと間違える。その奥に売店(飲み物やゆで卵が置いてある)があって、その前に切符もぎがいる。ずっと奥には散髪屋もあるが、これは韓国の銭湯では珍しいことではない。そんなに混んでもいない。日本人だと見ると、彼は「あかすり・・・」と声をかけてきた。丁重にお断りして、ロッカーを選んでいると、彼はちゃんと鍵のかかるロッカー(なかなか強力なロックがついているが、多くの人は鍵をかけない)を探してくれてそこに入れるように薦めてくれた。なかなか友好的で親切である。ロッカーには靴も入れる。中央に座れる台があるのは日本の銭湯と同じである。
 浴室に入る。中央に普通湯と熱湯の浴槽がある。普通湯はバブルも出ていて多くはここに入り、熱湯の方は誰も入らない。日本なら熱湯マニアのじいちゃんが必ず何人かいるはずなのだが。その右が洗い場で、左には、水の浴槽(打たせ湯になっている)がある。奥にはサウナもある。その中でも気に入ったのは、水風呂の奥の壁にあるタイル絵である。日本の富士山に対して、天地でも描かれていればよいとも思っていた。が、ここの絵は、水を浴びたり、踊ったり、楽器を演奏したりしている女達を木の陰から二人の男がこっそり覗いているという日本では考えられない絵である。宴会好きの慶尚人の気質がうまい構図と軽快なタッチで表されている良い例だろう。私はこの絵を眺めながらハイブリッドな風情を楽しんだ。私は東アジア人として一年のはじめは旧正月と認識するようにしているが、このときは「今年は何か良い一年になりそうだ。」と感じたのであった。
 良い気分で、脱衣場から出て行こうとすると、切符もぎの男は、「さようなら」と日本語で送り出してくれた。時間はちょうど9時。射撃場も開く時間だ。
  H15.1.1-3