阿弥陀池
佐田岬半島の宇和海側には2つの大きな潟湖があります。亀ヶ池と阿弥陀池です。三崎地域の南部半島のほとんど先端にあるのが阿弥陀池で、その名の由来はこの池の北側の丘の上にある写真の阿弥陀如来からきています。
亀ヶ池には大ガニの伝説があるようにこの阿弥陀池にも龍の伝説があります。昔、八幡浜の大島に龍がいてこの池をほしがったのだそうです。結局龍は池を手に入れることができず、竜王は怒って雷雨とともに大島に帰っていったのだそうです。村人は竜王が二度と来ないようにと阿弥陀様を祀りました。その阿弥陀如来は写真のように風よけの石垣に囲まれる形で残っています。
※ ただ、阿弥陀様の町が作った登り口の道標は変な方向を向いているので注意してください。登り口の案内ですのでそのままちょっと登れば阿弥陀様にたどり着きます。
広さ約5haのこの池は、淡水池で渇水期でもほとんど水位が変わらないそうです。昔はさまざまな魚や海鳥が見られ夕方にはボラがバンバン飛び跳ねていました。でも誰かがブルーギルを放流してしまい今では泳いでいる魚はほぼ全てブルーギルとなってしまいました。調査してみると石の下にはハゼがいますし時折スジエビも見られますし、貝類ではタニシが多く生息しているようです。
三崎地区固有のメダカは、20年ほど前は阿弥陀池の水路にいました。ところがムーンビーチの整備の後、井野浦の池尻では用水路の整備事業が始まります。工事はほとんど排水して行われたため三崎固有のメダカはほぼ絶滅したと思われます。それは環境省がレッドデータブックに絶滅危惧種としてメダカが指定(平成15年)されたころです。二名津中学校の自然が好きな生徒が何度かメダカを捕りにいって二名津の港の横の用水路に放流していましたので、そこに生き残っているかも知れません。でも、平成30年に見に行ったときにはどちらの川にもメダカの影はありませんでした。
この池の水はあまり出入りがないため環境が悪化し始めると、なかなか回復しにくいという特徴も持っています。まわりはみかん山になっており農薬がかなり使われておりこの池にも流れ込んできていると思われます。近年、アオコなどの発生が多く、魚があまり見られなくなってきており、阿弥陀池の環境については、しっかりとした調査が必要であると思われます。
水質や水生生物の面では悲しいことばかりですが、この池を取り囲む自然はとてもすばらしいものです。この南部半島は石灰岩や超塩基性岩地域が複雑に絡まる非常に珍しい地質らしくそのせいか地形も独特です。こぶのような小山を映す水面には可憐なスイレンの花が咲き、水遊びをしたり羽を休める渡り鳥の姿も絶えず見ることができます。
三崎町の時代この池を観光地化を考えたようで、周遊道路を整備し3ヶ所の東屋も設置しました。しかし、どうも町民や近隣の観光客ははここを歩いて回るような楽しみ方はしないようで、かなりの頻度で訪れてはいますが東屋に人がいるのを見たことはありません。確か周遊道路ができてすぐに道路の側壁に草花などの壁絵を描く活動も高校生がやっていました。今行ってみるとその形跡はあるのですが、コンクリートにそのまま描いているためもうおほとんど消えています。実はこの周辺はかなりの観光資源が集まっているのですがその有効活用はなされていません。でも、観光地化することでの自然環境のダメージを考えるとほっておいてもいいような気がします。
野鳥の池 −伽藍山のメダカの楽園の夢物語−
二名津の小中学校が遠足でよく登っていた明神からの伽藍山登山道、山頂の北の肩に平地に平成8年頃進められた伽藍山山頂部のの自然公園事業の一環として池が作られました。これは佐田岬は渡り鳥の通り道なので多くの野鳥が訪れることを考えて、野鳥が水浴びすることのできる水場としての池というもので「野鳥の池」と名づけられました。写真は作られた当時のものですが。北側はなだらかなスロープになって子どもが遊ぶにも安全な池でした。
ちょうどそのころ阿弥陀池のメダカが絶滅しかかっていて伍助会でも危機感をおぼえメダカを増やす必要を感じていました。この池は完全に他の河川と遮断されてヤブ蚊の巣となっているようなので、環境的にも問題ないだろうメダカを放流してみました。水生生物の多様性も考慮して、他にもヨシノボリ、スジエビ、ヌマエビ、ドジョウ等の人工池で生きる水生生物や水草も加え放流しました。うまく生態系のバランスが保たれば、ただの水たまりも子どもたちが自然とふれあう場になるかもしれません。
その期待は大当たりで、わずか2〜3年で野鳥の池でメダカが大発生しているという噂が聞こえてきました。多くの子どもづれの家族やメダカ好きが毎日のように訪れる伽藍山の名所になったのです。メダカの子が素手でもすくえ、ヨシノボリやエビ類も小さな網を入れるだけでザクザクとれるこの池はまさに小型の水生生物の楽園に変貌したのです。
しかし、その数年後大事件が発生しました。誰かがこの池に鯉を放流してしまったのです。鯉は悪食で水質悪化にも強く、ほとんどの水生生物を食い荒らす淡水魚のギャングです。錦鯉のイメージで日本ではあまり語る人はいませんが、ブラックバスやブルーギルと並んで世界中の池や川で生態系に深刻な影響を与えて問題視されている大型魚です。近年は日本各地で鯉の愛好家が川や水路に放流して深刻な生物汚染が進む死の川が増えてきました。川に鯉を放流すると、海と上流を行き来する魚や水生生物は根こそぎ駆逐されてしまい川は生物的遮断によりその環境が大きく変化しています。伍助会ではいろんな市町村の河川の様子も観察していますが、川に大きな錦鯉を泳がせているような場合は自然環境に対する認識がが最低レベルだと判断しています。
さて、伍助会で野鳥の池のその悲劇に気づいたときはすでに10匹ほどの丸々と太った鯉が泳いでおり、メダカは急速に数を減らしていました。伍助会でも鯉を数匹駆除しましたが写真の4匹が残ってしまいました。隠れるところもない小さな池なので水生生物の殺戮劇の末に、あっという間に温和なメダカや小魚類はほぼ壊滅して水面から消えていきました。
今や誰も訪れなくなって藪の中に沈み自然と不調和な色の錦鯉が不気味に徘徊する現在の野鳥の池、倒木などの影でわずかに俊敏なメダカやヨシノボリやスジエビなど棲息していますが、鯉も繁殖したためもうあの楽園に二度と戻ることはないでしょう。
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