済州へ
飛行機は、定刻通り関西国際空港を離陸した。旋回しながら高度を上げ、空港はどんどんちっぽけな海に浮かぶイカダのような島になっていく。大阪湾上空は晴れていて、淡路島もよく見える。淡路島は結構隅々まで走っているので、窓下に見える風景にかじりついて思い出に浸る。しかし、播磨灘から四国あたりは一面の雲である。剣山系だけでも見えるかと思ったがそれも見えず、ずっと済州までその風景が続く。飛行機には、今飛んでいる位置がモニターされているので、自宅上空と小倉上空を飛ぶときには、なんか複雑な心境になる。小倉は雲に覆われていたために原爆の悲劇を免れた街だからだ。
やがて機内食が出る。ちゃちな機内食は断ろうと思っていたが、写真のように寿司とソバ、だし巻きにヒジキと、今年の日本食の食い納めにはいいメニューなのでいただくことにする。同じ大韓航空なのに福岡−ソウル線とはえらい違いだ。酢飯の海苔巻きよりもキンパプのほうが食べやすいが、このときばかりはじっくり味わう。
やがて飛行機は対馬海峡を越え、済州上空を飛ぶ。が、眼下は相変わらずの白いカーペットである。漢拏山も全く見えない。モニターによると、飛行機は済州を越え、翰林あたりを西に飛んでいる。大丈夫かなと思っていると、そこから旋回して高度を下げていく。やがて雲に突入して、すぐに下界が見えてくる。やっと済州だ。郭支ビーチを見下ろしながらぐんぐん飛行機は高度を下げていく。日本では見られないパッチワークのような畑が広い台地に広がっている。所々に集まる朱色や緑や青の民家の寄棟の屋根押さえの真っ白なしっくいがいいコントラストになっている。
飛行機はぐんぐん高度を下げ、その畑をかすめるように飛ぶが、いっこうに飛行場は見えてこない。ぐんぐんこうどが下がるので大丈夫か...と、思うといきなり着陸である。さあ東洋のハワイに到着だ。以前、同じ時期に屋久島に行ったときは、なんと気温は25度もあった。が、外を見て唖然とした。雪だ。雪がチラチラ舞っているのである。出入国カードを書いてなかったので、スチュワーデスにもらう。
空港は、仁川と違ってこじんまりしている。日本の20〜30人の団体さんがきていて、添乗員が入国審査や税関の説明をしている。他はすいていて、うまいことになぜかロビーのど真ん中に勉強机程度の机といすのセットが置いてある。そこで、出入国カードを英語で記入する。職業は、案内書にあるとおり「office worker」ということにして、韓国内の住所(滞在先)は、済州を歩いて気の向いたところを選ぼうと思っていたので、案内書にあるホテルを適当に選んで記入した。
入国審査とセキュリティーチェック(ポケットにデジカメを入れていたので身体検査されたが、)もクリアして、荷物を受け取りに行く。荷物も仁川と違ってもうコンベアを回っていて、すぐに出てきた。よく見ると向こうから今回はコンベアを犬が歩いてくるではないか。エッと思ったが、おそらく麻薬捜査犬なのだろう。あんまり真面目ににおいをかいでいる風でもないが、引っかかる荷物もなかったようだ。さて、問題は例の「ナイフ?」とされたキーホルダーだ。中央に職員らしき人がいたので、預かり証を見せると、思いっきり派手なオレンジの紙袋(checked Baggage)を渡し、税関の入り口の怖そうなお姉さんに渡すように言う。お姉さんは厳しい表情で、思いっきり紙袋を破ると、中を一瞬見たが、すぐに私に渡し先に行くように言う。この程度は全く問題ないらしい。
H14.12.26-2