春川駅前にて
駅の前には公衆電話ボックスが5つあり、その横に大きい観光案内板がある。駅の広場には小さな観光案内所が立っていて、そばにバスが待っている。おそらく市街へのバスなのだろうが、タクシーも2台ほど待っている。私は、案内板を前にしてしばらく思案していた。そこへ軍の小隊(50名くらい)が到着した。二十歳前の初々しさの残る青年ばかりで、迷彩服にずた袋を持ち、駅の正面に整列して、上官がなにやら指示しだした。平和ぼけの国から来た私にとって、緊張する異様な光景なのだが、他の客は特になんでもない普通のことなのであろう、平気である。
さて、これからどうしたもんだろう。しばらく考えて、時間もあることだし歩いて市街まで行くことにしようかと思った。春川は、日本の北海道の内陸の都市のように、冬は韓国でも一番冷え込む(−30℃位になる事もある?)ところだそうだ。ここの名物はいろいろあるが、発祥地でもあり専門の横町さえあるタッカルビとマッククス(春川ソバ)である。タッカルビは、ディナーなら食べたいが、今は昼時である。マッククスはぜひとも味わいたいところだ。日本でも「水と蕎のうまさは自慢できない」というが、返せばソバのうまい土池は、厳しい自然と共生している人がいるところでもある。
ということで、北に歩いてみたが、100mも歩くと味気ない風景を前にして、なんかうんざりしてきた。暑さのせいもあるが...。バスかタクシーを使おう。その前に観光案内所に確認をとってみようかと思った。
駅前の小さな案内所には、若い女の職員がいた。私が入ると振り向き、韓国では皆そうであるが、日本人だと分かると困った顔をする。日本語は通じないようなので「ナヌンイルボンサーラムイミダ。ヨギオットケカヨ」と楊口への行き方を地図を指して問うた。すると彼女は日本語の地図を出してきた。明洞地図以来の韓国で見る日本語版である。彼女は、昭陽ダムまではここから出る12番か12−1番のバスで行って、楊口行きの連絡船に乗っていくことを英語で説明した。そういえば駅前に停まっているバスは12−1番だ。「チョギ、ポス?」と外のバスのことを聞くと、彼女はカウンターから出て、私を外に連れだした。残念ながらその時バスは出発した。彼女は、残念そうにため息をついたが、次のバスが11:30であることを告げた。まあ30分待てばいいだけだ。むしろこれからのことをこの日本語地図でゆっくり検討できる。お礼を言って駅の待合室で待つことにした。
さっき到着した軍人達は、多くはそのままの位置で座っている。しかし、自由時間なのか、駅をうろうろしたり売店や自販機で買い物をしたりする者もいる。軍隊というのも思ったより穏やかなんだなと思った。のどが渇いたので、売店で飲物を探すが、結局バナナ牛乳を選び、それを飲みながらこれからのことを検討した。春川への興味については、日本語の地図があったことで、逆にさめてきた。内陸の小さな町にさっさと行って、より韓国らしい韓国に触れたいと考えだした。ということで結局、春川市街には寄らず、さっさと楊口へ行くことにした。
2002' 8/23