文友堂書店

 この書店は、入ってすぐのフロアが子供用で、よく見ると「星の王子様」とか「手塚治虫物語」とか、国際的なものがある。今の日本の親の世代の幼年期にブレイクし、日本の物語文化を駆逐し、西洋貴族趣味のはびこるいもとになったいわゆる西洋の王様ものの物語もたっぷりある。
 もちろんピカチュウやハム太郎もある。漫画もこのコーナーであるが、そんなに展示面積は広くはなく、したがって、スラムダンクやせんと千尋、コナンなどメジャーなものしか見あたらない。私はここで、韓国近代史を書いた漫画(結構デッサンもしっかりしている)と、ドラゴンボールを買った。
 一階のフロアは、子どものフロアより少し高くなっている中二階といった感じで、一般の書籍がある。日本と大きく違うのは、雑誌類の扱いである。ソウルでもそうだったが、雑誌類は店頭に置かれることはないようだ。東大門市場の本屋では売れ筋の雑誌(日本のファッション雑誌)は店頭に置いてあったが...。この本屋では雑誌類は一番奥に押しやられている。月刊の漫画本やいろいろなジャンルの雑誌も、それぞれ日本と比べればずっと種類が少なく、ワンコーナーに収まってしまっている。ましてやいかがわしいと思われる本は全く見あたらない。ということは別に専門店のような店があるのかもしれない。
 山関係の本は右奥にある。日本の山の山行記やそれぞれの山についての説明や山登りの本など、分厚い専門的な本は充実している。内容の濃い本は日本よりも多いのかも知れないが、ハイキングやアウトドアレジャーに関する軽いのりの本や地図はほとんど皆無である。道路地図といったたぐいの本もほとんどないのである。とにかく真面目な本が多い。二階は文芸書、三階は専門書というのも、西面の東宝書籍と同様である。この書店では三階にカフェサロンといったエリアもあるが、買わないで読むこと(立ち読み的な読書)ができるかどうかは不明である。
 図鑑類は、幼児ものこそ子どものコーナーにあるが、小学高学年から高校生程度のものがないに等しい。科学の本も専門書こそ多いが、学生用のものがない。そして価格が日本のものとほとんど同じということは、物価が安い韓国なので、一般の人には手が出ない本ということになるのだろうか。
 学校の参考書や教科書のコーナーは一階のワンコーナーを独占している。それらの本は、科学系のものを見る限り、日本のものに比べて写真やイラストが少なく、文字もぎっしりで、苦手な人には取っつきにくいだろう。その中で、英語と数学の本や参考書がやたら多い。内容もなかなか本格的で、日本とは比べものにならない。シビアな受験国である韓国のお国柄を表している。全ての表記をハングルにする運動への反動としての、東アジアの共通語である漢字の教育書、日本語(高校用)の教育書も多い。8年前に行ったソウルの本屋では、英語、日本語、中国語が三つ巴状態であったが、今はどうも差がついてしまっているようだ。

   2002' 8/29