1月4日 メーサリアン〜メーソート 

   メーサリアンをまだ暗いうちから出発する。ミャンマーとの国境には川があるようで、霧が深い。山また山の光景で、峠のようなところでは、雲海のように見えるところもある。ミャンマーの山は面白い形をしているものが多く、このあたりは石灰岩地帯なのだろうと思われる。右の写真は、途中の集落の学校のグランドである。すべての家が大きな木の葉で屋根をふいている集落もあった。各地に検問もあり、国境地帯の緊張もあるが、水牛がフンを落としながら歩いてもいる。道は良く、さらに拡張工事も進んでいるようである。しかし、交通量は少なく、ガソリンスタンドのようなものがほとんど見あたらない。途中なんとか給油所を見つけて走り着ることができたが、何度もこの地で野宿になるのだろうかと心配もした。

 やがて、タイ・ミャンマー国境の拠点の町メーソートについた。そこから数キロ西に、1ヶ月ほど前に再開したばかりのイミグレーションがある。イミグレーション前の柵にバイクをつないで、出国手続きをする。ところが、タイの係官はミャンマーでは宿泊できないという。理由はよく分からないがそれなら、イミグレーションが閉まるまでの2〜3時間しかミャンマーに入れないじゃないか。出直そうかと思ったが、予定も立て込んでいるので、プチミャンマー体験のために出国することにした。  国境は歩いて渡れるような小さな川で、タイを出国すると歩いて写真の小さな橋を渡る。何と橋の半ばにはインターナショナルな物乞いが寝そべっているではないか。対岸に渉るとイミグレーションがあってミャンマーに入国する。係官は、外国人旅行者だと分かると冷房の効いた事務所内にはいるように言ってドアを開けた。500Bを渡すと所長のような人にパスポートと同時にそれを渡し、代わりにパスポートNoと日付の書いた紙を渡された。やはり、宿泊もできないとのことで、イミグレーションが閉まる時間までにもどってこなければならないと告げられます。時差もあるようで、私の時計で15:30までにもどるように言われて入国した。それまで2時間あまりしかない。

 ミャンマーの子どもや若い女の人は顔に白っぽいタナカを塗りたくっている。また、男は腰巻きをしていて雰囲気は一変する。開いたばかりの国境は、観光どころではない状態で、見わたしても観光客らしき者もほとんどいない。私は、道路上に木の机を出し、札束を積み上げた換金業者で500バーツをチャットに換えて、早速、市場から袋小路のスラムに突入した。危険な場所は、西欧人がいないのでそれと分かる。このスラムには、西欧人はおろか全く外国人らしい者すらいない。でかい外国人に興味津々の様子で、緊張する雰囲気である。市場をぬけた小さな屋台で1ぱい20円くらいの大辛のめん料理 を食べる。 足下をひよこが走りまわる。人々もこのいきなり進入してきた異邦人に対してほとんどが笑顔で迎え、やがて珍しい外国人がいると子ども達も集まってきた。それが写真の子たちである。カメラを見つけると写してくれとねだる子どもや母親もいて、観光客ずれしていない人々は平和なものである。スラムにも入って見たが袋小路のようでどこにもぬけられそうもない。再び市場を通って通りに出た。
 国境の川に出てみる。大人達は普通に川を船で自由に渡っているし、中州では子どもたちが水遊びしていて、もはや国境とは思えない。でも、渡し船の事務所を撮していると、写真はダメというような静止があった。警備の軍人と思える人もいるが、ぼんやりしているだけで何を取り締まっているのだろうか。川沿いの道を歩いていると、おじさんがなにやら汚いものをつまんで私に差し出した。東南アジアなれしている者ならすぐに分かるだろうが、友好のビンロウである。慣れればこの嗜好品も味わえるのだろうが、石灰の固まりとともに食べるこの小さな椰子の実はとんでもない味である。2時間ほど口の中が気持ち悪い状態になるし、赤い唾液が止めどなく出る。私はこれで、台湾でえらい目にあったことがあるので、丁重にお断りする。
 ミャンマーの盛り場では、なにやらおもしろい遊びをしている大人達がいるので、中に入る。トランプも使うビリヤードだ。写真を撮っていると、日本に行ったことがあるという主人が笑顔で絡んできた。悪意は感じられないが、結局どういうルールなのか分からなかった。お土産のような物も売ってないし、結局、昼飯を食べただけでタイにもどることになるようだ。再びバーツに換金して、ミャンマーを出国。国境の橋を渉る。こんどは物乞いはいないのだが、野良犬が橋の上で寝そべっている。この場合どちらの国の犬になるのだろうか。でも、今回の旅行で最も多くの素朴な笑顔に恵まれたのだった。

 3度目のタイ入国スタンプをパスポートにもらって、メーソートに一泊することになった。手持ちのバーツが少なくなってきたので贅沢ができない。換金所もすべてしまっており、明日は朝早い出発だから、どうしようかと悩む。


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