韓国のテレビドラマ 2017.2月更新
テレビドラマは限られた時間と経費で作るため、作品の芸術性という点では映画に劣るかもしれませんが、それが逆に生活文化を知る資料という点では優れたメディアになります。視聴者も映画に比べて圧倒的に多く、韓国の場合、バラエティ番組の質が低いこともあって、ドラマはテレビ番組の華だといえます。そのほとんどが、若者の恋愛ドラマを軸に構成されていますが、局が内容面でもかなり力を入れていて、単なるCMのための視聴率獲得とか、人気タレントの提灯持ちの作品にはなっていないように感じられます。ほとんどのドラマにはオリジナルサウンドトラック(OST)CDも制作され、制作者やスタッフ、役者が番組製作に全力投入しているのが、ひしひしと感じられる作品がほとんどです。そういう意味で、近年、様々な面で地に落ちた感のある日本のTVドラマの未来を考える上でも、観る価値があります。
冬ソナ以来の韓流ブームのおかげで、韓国テレビドラマの評が巷にあふれるようになって久しくなります。アジアの各地でも韓流ドラマが花盛りです。モンゴルの草原の真ん中でも人々がかじりつくように観ていたのは韓国ドラマでした。「おしん」をはじめとする日流?ドラマがアジアを席巻していた頃、日本人はほとんど興味を示しませんでしたが、韓国は政府をあげて国家戦略の柱として韓式ドラマの普及を進めています。もちろんこれらのメディア(韓国文化)とセットで日用品を中心とした生活物資の韓国製品のアジアへの進出には目を見張ります。
さて、このページでは、韓国の生活や文化を知るという観点で、私の観た各ドラマを紹介してみます。韓国文化に興味を持つ方の韓国理解の参考になれば光栄です。
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MBCドラマ(〜2003
2004〜)
SBSドラマ(〜2003
2004〜)
KBSドラマ
日韓合作ドラマ & シットコム
韓国ドラマには以下にあげるような特徴があり、同じテレビドラマとはいえ日本とのテレビ文化の違いを感じさせられます。
ドラマ制作局は、KBS(公営放送)、MBC(半民半公放送)、SBS(ソウル民放)の3局だけがほとんどです。この3局はゴールデンタイムの視聴率で熾烈な競争をしているため、それがすぐれた役者の確保や内容の充実に力を入れる理由になっている。また、ネット先進国だけに視聴者の意見も色濃く反映されています。なお、メディア科を専攻している韓国人に聞くと、1990年にKBSから独立したEBS(公営放送)という教育を目的にした局も青少年向けのドラマを作っているそうです。
韓国ドラマでは、日本ドラマの品を落とす原因である残虐な暴力、セックスシーン等、教育上悪い部分は原則として放送されません。(ただし時代劇では拷問シーンは多い) また、韓国では、ドラマの右肩に写真のような数字(視聴指導の文)が表示される(12,15,19の3種類が多いが7とか8もあるらしい)場合が多く、保護者が子供の視聴に関して判断する指標になっているようです。日本で紹介される韓国ドラマは「15」が多いのですが、これは15歳以下の視聴は問題があるという意味です。その基準は、日本の常識からみるとなかなか厳しく、その判定をどのようにしているかも興味深いところです。日本の民放の番組が、スポンサー商品の購買層をターゲットにして、なりふり構わない視聴率確保にのために好奇心をあおる問題映像垂れ流しの状態が野放しになっていて、ほとんどの保護者がそれに対応できない状況をみると、これは結果的には正しいメディア提供の姿勢だと感じられます。
韓国ドラマは一般的には途中にCMが入らず、番組時間がファジーなので、編集で無理に時間に合わす必要もありません。多くは1話の時間はおよそ1時間ですが、45〜80分くらいで変動します。日本では、まずありえないことなので、留守録の際にびっくりしましたが、良い作品を短時間で仕上げることを優先しているということでしょうか。金の動きに聡い前大統領の李明博は財政的な見地からCM挿入を考えていたそうなので今は変わっているかもしれません。宣伝枠の設定とそれによって番組構成が影響されると考えられ、ドラマの質の面からマイナス要因だと私は思います
また、放映は1話1時間で週2話というドラマが多いようです。16〜20話程度のドラマが多いので、1つのドラマは約2ヶ月で完結してしまうことになります。このように短時間で集中して制作されるためか、俳優が役によく入り込んで、徹底した役作りをしています。ただし、視聴率で製作期間が変動することがあるので最終回が何話になるのかは、終盤にならないとわかりません。ギャラは1話につき支払われるようなので、回が多くなれば俳優やスタッフも有り難いのでしょうが、スケジュール管理はかなりシビアなものになるのではないでしょうか。それでなくとも俳優にとってドラマ撮影は、ハードスケジュールできついらしく、人気が出てくると映画に移行する傾向があるともいいます。さらに、百話を越える長編番組が結構存在するのも韓国ドラマの特徴です。日本の最長ドラマとされるNHKの大河ドラマでも1話45分の50話程度なのですだから、そのとんでもない長さが想像できます。最長は「田園日記」で、放映22年間全1088話という怪物ドラマです。恐るべし韓流!。
このようなことから考えると、韓国のドラマがいかに一般民衆の生活に浸透し文化を反映しているかがよく分かります。しかし、その歴史が浅いため、個性的な若い俳優は多いがベテラン層が薄く、熟年層のテーマを描くドラマも少ないと感じられます。これは役者を含め、技術者を軽視する韓国人の考え方にも起因するのかもしれません。ベテラン俳優(写真等)は、多くのドラマをかけ持ちで出演することとなり、そのスケジュール調整と役の切り替えを考えると、その自己管理能力に頭が下がります。そんな酷使状態なのにもかかわらずベテラン陣がいい演技をしていて、それが韓国ドラマの底力となっています。
反面、若い俳優は星の数ほど誕生しているようです。韓国は世界最先端のブロードバンド普及国であり、ネットの普及と番組や俳優への影響力も日本の比ではありません。一般視聴者の意見が反映されるという点では優れたネットと番組の関係ですが、反面俳優のプライベートは場合によってはズタズタになるという問題も否めません。詳しい事情は分かりませんが、2005年のイ・ウンジュから始まる、チョン・ダビン、チェ・ジンシル、パク・ヨンハ等の一線級の者をはじめとする相次ぐ俳優の自殺はその問題の深刻さの現れでしょう。田宮二郎、大原麗子、藤圭子等の日本の有名タレントの自殺は絶頂期を過ぎた熟年に多く、これからの大活躍が期待される若年俳優の自殺は悲壮です。そもそも韓国の自殺率は世界一といわれ、さまざまな深刻な社会のひずみが渦巻いている国なのでしょう。
私は、今後も社会のひずみと高度情報時代のメディア発展の渦の中で、重要な意味を持ち最先端の騎手を務める韓流ドラマの健闘を祈るだけです。